MIYAMA Biennale実行委員会 代表
筒井 敏郎さん
デザイナーはクライアントの求めるものを具現化する仕事。対してアーティストは自分のやりたいことを発信して、それを認めてくれた人たちに作品を販売して生計を成している。私からするとうらやましい。憧れのような、ある種のリスペクトがあります」。インテリアデザイナーとして会社を起こし、オフィスやショップなどさまざまなデザインを手掛けてきた筒井さん。アーティストに対する思いをこのように話しました。
4月25日、春の大型連休の始まりに合わせ、東市来町の美山で、あるアートイベントが開催されました。「MIYAMA Biennale(美山ビエンナーレ)」。薩摩焼の伝統が息づき、モノづくりの里としても知られるこの町を「美山まるごと美術館」としてアートに染めるイベントです。森の遊歩道には段ボールアート、登り窯の脇には軽石アート。工房やカフェには作品が並び、5月6日までの12日間、美山の日常にアートが共存しました。「アートはホワイトキューブ(白い空間)に展示することが当たり前のようになってる。そういう見せ方だけではなく、作品が生まれる場所を見てもらう。そこに大きな意義がありました」。制作のプロセスと完成されたアートを同時に見てもらうことにこだわったと話す筒井さん。制作の「生みの苦しみ」を見てもらうことで、モノづくりの世界に興味を持ってもらうことを狙ったと話します。
「ビエンナーレ」とは2年に1度という意味のイタリア語。ヴェネチア・ビエンナーレなど、世界には2年を周期とするアートイベントが数多くあります。日本でも各地で開催され、令和4年、筒井さんは偶然訪れた琵琶湖で「BIWAKOビエンナーレ」と出会いました。古民家や神社、古き良き建物を展示場として町全体が美術会場となるBIWAKOビエンナーレ。このイベントに筒井さんは、古くから薩摩焼の里として続く美山との親和性を感じたといいます。そこに、アーティストの活動を応援したいというかねてからの思いも加わり、3年後の令和7年、「美山ビエンナーレ 0(ゼロ)・始まりの景色」の開催が実現しました。
「アートイベントは未経験で当然不安がありました。失敗する前提でやってやろうと突っ走った感がありました。だからゼロ。失敗したらやめればいいと思っていました」。専門家にアドバイスをもらいながら開催へと至ります。来場者は11日間で約1000人。反響も思ったよりよかったと筒井さんは話しました。「これだけ来てもらえるならまたやってみよう」。こうして今年「美山ビエンナーレ 1(イチ)・目覚めの景色」が開催されることとなります。テスト開催を経て本格開催となった美山ビエンナーレ。会場規模も大きく広げ、参加するアーティストも2倍弱に増やしました。そのうち県外からの参加アーティストは8人。全体の3割近くになります。「県外からアーティストが参加することで美山に刺激が生まれる。それが新しい作品につながる。このイベントで人と人がつながる場を提供できれば」。今年は12日間の開催で来場者数約5000人。イベントは大成功を収めました。
「これからも外からのアーティストを招いていきたい。美山で創作活動をするとチャンスも多い。そういう場所だと思ってもらえれば移住者も増え、にぎわいも増える。それに向けた種まきをしています。結果が出るのは10年後かもしれない。いろんな作家の人が集まって『工藝特区』みたいな場所になればいいなと思います」。筒井さんは2年後の開催、そして10年後の美山の未来について力強く話しました。

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